『自薦 THE どんでん返し』を読んだ その1

先日本屋で見かけた『自薦 THE どんでん返し(双葉文庫)』を買ってきたので軽く感想を書いてみる。
一応ネタバレにはならないように心がけるけど題名についている「どんでん返し」の部分については少し内容に触れた感じになると思われるので注意。

自薦 THE どんでん返し(双葉社ホームページ)

本作品は推理小説で有名な複数の作者の作品を集めた短編集。
テーマは「どんでん返し」となっていて、最後の最後で読者にあっといわせる構成とのこと。
ここまで最初に書かれてしまうと、どんでん返しのびっくり加減が半減してしまいそうな気がしなくもないが、とりあえず各作品ごとに軽く触れていきたい。

以下目次とその感想を書いたページへのリンク
『再生』 綾辻行人
『書く機械』有栖川有栖
『アリバイ・ジ・アンビバレンス』 西澤保彦
『蝶番の問題』貫井徳郎
『カニバリズム小論』 法月綸太郎
『藤枝邸の完全なる密室』 東川篤哉

今回扱っているのは以下二作品となります。
『再生』 綾辻行人
『書く機械』有栖川有栖

一話目 『再生』 綾辻行人

いきなり館シリーズでおなじみの人。
内容は欝気味の大学教授が通院先で偶然出会った女性にのめりこんでいく。しかし彼女は特異な体質を持っていて、というストーリー。
40ページほどの短編ではあるものの、冒頭のちょっとすさまじいシーンとそこに至るまでの教授の内心と環境の変化が書かれている。
特に各人物の書かれ方がわかりやすく、短編にもかかわらず教授と女性が深いところまで繋がりあうという流れがすんなりと入ってくる。
その上で中盤彼女の告白から嫌な予感がひりひり入ってきて、最後ある出来事から冒頭のシーンにまで至ると最初に見た教授の同じ行動がまったく違って見えるという仕掛け。
ただラストの「どんでん返し」の部分については必要だったかなと思ってしまったりする。
それらしい複線もあるといえばあるが、どちらかというとその直前、彼女の台詞のほうがうわー、と来る。
そっちも含めてどんでん返しということなんだろうか。
何回も読み返せる良作だが、どんでん返しの驚きを求めてみるとやや弱いかな、という印象。

何だろう、ゲームとか映画とかだと自由にあーだこーだ言っても平気だけど、本相手だとなんか緊張する。
作者に直接物言ってる感じになっているからかな?

二話目『書く機械』有栖川有栖

続いて二話目。
才能はあるもののいまいち冴えない作家相手に編集者である主人公とその上司が起死回生の策に出るといった感じの話。
話の中でいろいろ振り回される作家からにじみ出る常識人的なイマイチな人オーラと上司の狂気のギャップがすごい。
作家の弱腰だけど自分の好きな話題の時には饒舌になるといったところや、上司の何が何でも作家を売れさせたいという気持ちにも共感を覚える。
だけど、中盤若干狂気を帯びてくる上司の言動に作中の主人公と作家が突き動かされていくという流れのあたりで、ちょっと置いていかれてしまった。
狂気の勢いに乗り遅れてしまったというか、中途半端に作家側に感情移入していたせいだろうか主人公のように上司の言葉に聞きほれてしまう事はなかった。
そのせいで最後の落ちの部分も、ねーよ、という意識が先行してイマイチ受け入れられなかった感がある。
どんでん返し、は、あった、には、あったという印象。
中盤当たりの上司の演説に入り込めるかが重要な作品かなと感じた。

なんか長くなってきたので、続きはまた後日。

次回 → 『自薦 THE どんでん返し』を読んだ その2

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